シラバスの意義と活用

 高専や大学などの高等教育機関では,教育改革の一環として,授業内容を提示するシラバ スが作られるようになってかなり時間が経ちます。しかし,シラバスに対する認識の不足か ら,折角作られたシラバスが十分には活用されていないという声があります。シラバスを編 集するにあたって,シラバスの重要性についてひと言述べたいと思います。
 高専は,5年一貫教育で実践的技術者を育てることを基本理念としてきましたが,近ごろ の科学技術の急速な進展と社会環境の著しい変遷に対応して,従来の「実践的中堅技術者」 養成から,専攻科教育へと至る全課程で「研究開発型技術者」養成を重要な目標としていま す。旭川高専もこの大目標に伴う我が校独自の教育目標を掲げています。このような目標を 達成する教育活動の全体計画書としてカリキュラムがあり,カリキュラムを構成する各科目 の具体的な授業計画書としてシラバスがあります。
 旭川高専のカリキュラムとシラバスをあわせた教育計画は,旭川高専がどのような教育を 行うかを学生や社会に約束するもので,社会がその計画書を認めることにより旭川高専の存 立が保障され,約束した計画がどのように達成されたかによって旭川高専の評価が決まると 言えます。
 このようにシラバスは,
1) 担当教員が授業計画を明確にする。
2) 授業内容を提示することで,学生が学習目標を理解することを助け学習意欲を刺激する。
3) 学生と教員との間の情報交換を容易にする。
4) 教室外における自学・自習の準備学習の指示をする。
5) 教員同士の共通理解を作り,各教員がカリキュラム全体との整合性をもって授業を行う ことを助ける。
6) 設定された学習目標を基準に達成度を測ることにより,恣意的成績評価を防ぐ。
7) 教育の内容や水準を明示した外部評価資料となり,教育の一層の充実をもたらす。
といった意義をもっています。シラバスは,学生にとっても教員にとっても重要な学習・教 育活動の設計図であり,教員・学生が机上に常に備えるべき資料です。
 シラバスの意義が十分果たされるためには,@科目の総括的な学習目標(カリキュラム上 の位置づけ),A何ができるようになるかの具体的目標(到達目標),B授業の内容と筋書き, C成績評価の方法,D教科書・参考書,などが統一的に学生中心の表現で書かれていること が必要ですし,履修する上で必要な要件などを詳細に示した授業計画書です。
 ここに集められたシラバスは,本来の在るべき姿から見てまだ不十分な点もあるかもしれませ んが,各教員のここ数年来の努力の結果としてできあがってきたものです。学生諸君は,シラバ スの意義をよく理解して,これを自らの学習に役立てていただきたい。学生諸君がシラバスに関 心を持ち,教員との情報や意見の交換を密にすることにより,シラバスはより完全なものに改善 され,ますます有用なものになります。学生と教員とが協力してシラバスをよくすることは,旭 川高専における学習・教育を改善することそのものなのです。

副 校 長 片 山 則 昭


旭川高専2008